砂漠の夜の幻想奇談
相手を生かすことなく剣を振り下ろしたシャールカーン。
死体がラクダから砂の上へと崩れ落ちていくのを馬上で確認し、それから謎のガチョウの群れを見る。
ガチョウ達は先程までの闘争心はどこへやら、今は大人しく全員でシャールカーンを見上げていた。
その数を数えて、シャールカーンは驚嘆する。
「十二羽…」
不意にトルカシュの話を思い出した。
――十二人の亡霊が、真夜中の砂漠をさ迷っているんですよ~!
「ふふっ、十二人の亡霊ではなく、十二羽のガチョウに出会ってしまったな」
その後、シャールカーンはトルカシュやバルマキーらと合流し、残りの旅を続けた。
そして無事ダマスに到着し、市民から快い歓迎を受けたのだった。