砂漠の夜の幻想奇談
「くっ…まだ殺されていないだけマシか」
「どうする?このまま俺が姫を連れて帰れば穏やかに済むぞ」
挑発的に口角を上げるカシェルダ。
(シャール…どうするの…?)
バルマキーが殺されるのはサフィーアも嫌だ。
一度自分が帰る必要がありそうだ。
しかし、一度コンスタンチノープルに戻ったら、もう二度と両親は外出を許してくれないのではないか。
二度と、シャールカーンに会えなくなるのでは。
その考えが頭を過ぎり、不安に鼓動が速くなる。
(シャール…)
少し陰りのある彼の横顔を見上げる。
すると――。
「俺も行こう」
力強い口調でシャールカーンは言った。
「決めた。サフィーアと一緒にコンスタンチノープルへ向かう。俺自らアフリドニオス王に会いに行く」