砂漠の夜の幻想奇談
「本気か?お前にとって敵の懐に飛び込むようなものだぞ」
カシェルダの言葉にもシャールカーンは臆さなかった。
「承知の上だ」
不敵に笑ってから召使達に向き直る。
「ダマスに帰還したばかりだが、すぐコンスタンチノープルへ向かう。支度をしろ!!」
「マジっすかぁ~!!」
トルカシュが情けない悲鳴を上げた。
「みんな疲れましたよ!少し休ませて下さい!!」
忠実な臣下を代表してトルカシュが懇願する。
と、シャールカーンは少し考えてから最終的にこう言った。
「……出発は二日後とする。それまでに体調と用意を整えてくれ」
かくして、コンスタンチノープルへの旅が決定した。
二日後、予定通り彼らはダマスを発って海岸沿いの街へ行き、船に乗り込む。
海路を進み、キプロス島やロードス島を通過してエーゲ海へ。
そしてさらに北上し、数日後にはバルカン半島を目前としたのであった。