砂漠の夜の幻想奇談


 午前中の日差し、海の匂い。

どんどん迫ってくるヨーロッパ大陸を見つめながら、甲板でサフィーアは溜息をついた。


(戻って来たのね…)


「姫、あまり船縁の側へ寄ってはいけません。波がかかってしまいます」

傍に控えていたカシェルダがサフィーアの肩を抱き、自分の方へと引き寄せる。

現在シャールカーンはトルカシュと共に船首の方へ、ドニヤは他の侍女達を指示しながら食事の支度をしているため近くにいない。

今回の旅にはダハナシュは参加しなかった。

理由は単純。

カシェルダが追い払ったからだ。


(父上や母上は怒ってるかしら?)


カシェルダ曰く、これまでの出来事を包み隠さず両親に報告したとのこと。

暇なので紙と筆を用意し聞いてみる。

揺れる中、しかも甲板にて書いたので普段より汚い文字になってしまったが、カシェルダはちゃんと読み取った。


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