砂漠の夜の幻想奇談
第二話:魔神の賭け
シャールカーンがダマスの太守になってから二週間。
月が白く輝く穏やかな夜のこと。
魔神マイムーナは背中に鳥の翼を生やし、闇夜の飛行を楽しんでいた。
人間に見つからないようダマスの町の空を飛び回りながら、思いついたことを口にする。
「そういえば最近、新しい太守が来たとか。どれ。どのような輩か、顔を見に行こうではないか」
興味本位でダマスの宮殿を目指す。
彼女は上手く宮殿に忍び込むと、風に姿を変えて主の寝室を探した。
大広間を抜け、宮殿の奥へ。
一陣の風となって廊下を通り過ぎ、ついに彼女は使用人の奴隷が見張りをしている立派な扉を見つけた。
「ここか…」
奴隷は居眠りをしていて、マイムーナが扉をちょっぴり開けたことに全く気づかなかった。
しめしめと思いつつ中へ入る。
そして…。
「な、なんと…!」
この女魔神は寝台に横たわる青年に見惚れ、感嘆の溜息をこぼした。