砂漠の夜の幻想奇談

「嫌だ」

彼のニッコリスマイルはどうやらマイムーナのカンに障ったらしい。

彼女は尊大な態度で言った。

「我は今、至高の美を見たのだ!未だその甘美な余韻に浸っているところゆえ邪魔をするな!」

「至高の美?…ああ、貴女も見てしまったのか。サフィーアを」

ホォ、と溜息をつきダハナシュが妖しく瞳を揺らした。

「サフィーア?お前は何を言っている?サフィーアとは女の名だろう?我は新しいダマスの太守について述べているのだぞ」

「新しいダマスの太守?あのシャールカーンとかいうクソガキか?」

「クソガキとは無礼な!彼は美の中の王子ぞ!」

「いやいや、俺の知るサフィーア姫の方が何万倍も美しくて愛らしい。シャールカーンよりも美人だ。絶対」


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