砂漠の夜の幻想奇談
「違うってば!なんでポーンがそんな動きすんの!?」
「なぜって、目の前に敵が来たなら取らなければ。敵に背中を見せるのは恥です!」
「恥とかどうでもいいから!確かにポーンは真っ直ぐ進むけど目の前の駒は取れないんだよ!取る時は斜めって決まりがあんのっ」
「むむむ…」
「いい?ビショップは斜め。ルークは縦横移動。ごっちゃにしないでよ?」
「むむむむむ…」
「ナイト動かす時はちゃんとマス数えて。かなりややこしいから」
「むむむむむむ…!」
「テオさ、せめて基本ルールくらい脳みそに叩きこんで。対戦できないから。見てよ、この盤上の無法地帯」
「……すみません」
親友ミロンにチェスの指導を頼んだテオドール。
ややこしいルールに挫けそうになっていた。