砂漠の夜の幻想奇談
「こんなんで明日の勝負平気なの?」
「大丈夫です。万が一チェスに負けたとしても、吟唱と馬上槍試合で勝ちます」
「ふーん。で?詩は覚えられたわけ?」
「…………」
「おい。視線泳がせて黙るなよ」
なんだか頭痛がしてきたぞ、とミロンは思う。
テオドールがチェスのルールを覚えられないのは今に始まったことではないが、さすがに明日を思うと冷や汗が出る。
なんとか対戦できるように仕込まなければ。
相手の王子にナメられたら不愉快だ。
「じゃあ、時間もないし。もう一回やろう。オレが白。テオが黒ね」
「はい。お願いします」
強さの上下がハッキリしているため、盤上ではまだ一度もミロンに勝ったことがないテオドール。
駒のルールは教えてもらうが、どう指すかはテオドール自身で判断していた。