砂漠の夜の幻想奇談
「うわ~、そう来るか」
「え?何かマズかったですか?」
「いや別に~」
ニヤニヤしながらルークを進めてくるミロン。
また負けそうな予感がしてテオドールはゴクリと生唾を呑んだ。
次はどこに指すべきか、慎重に考える。
が…。
(ダメですね。深く考えても全くわかりません)
もともと参謀タイプではないのだ。
次の次の次を予測して行動するのは苦手だったりする。
考えることを放棄して闇雲にナイトを動かそうとした瞬間――。
「クイーンを横に」
聞き慣れない声がした。
驚いて顔を上げれば、金髪青年が盤上を覗き込んでいた。
「な、なんです君は…」
「いいから。クイーンを横に移動して」
訳もわからぬまま、とりあえずアドバイス通りにクイーンを動かす。
「あ!オマエ、異国の王子!!」
ミロンが金髪青年の正体に気がついた。
「え!?シャールカーン殿!?」
テオドールも目を丸くする。