砂漠の夜の幻想奇談

「俺のことは気にしなくていいよ。ほら、次どうぞ」

「うっ」

ミロンが唸りながらルークを下げた。

「なら、クイーンの前のポーンを進めて」

また指示を出され、テオドールが恐る恐る駒を動かしていく。

白のルークが逃げた。

「同じポーンを前へ」

「ならっ」

ビショップを前進させてきたミロン。

「またこのポーンを進めて」

シャールカーンの声は落ち着いている。

テオドールは信じてポーンを進ませた。

ミロンがクイーンを移動させるのを見てからシャールカーンが囁く。

「このポーンでビショップを取るんだ」

白のビショップの位置は黒のポーンの斜め前。

取れる。


「はい!」

テオドールはポーンを斜めに動かし、嬉々として敵のビショップを取った。


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