砂漠の夜の幻想奇談
午後からは大広間で詩の吟唱対決だ。
今度は負けませんと意気込んで、一旦退場するテオドール。
まずは一勝。
シャールカーンの心には少し余裕ができた。
(やった!シャールが勝ったのね!)
王様の横で一緒にチェス勝負を観戦していたサフィーア。
テオドールがいなくなった直後、シャールカーンに駆け寄る。
「サフィーア、見ていたのか」
腕に飛び付いてきた寵姫を笑顔で迎え、シャールカーンは自信に満ちた声で言った。
「勝ったよ」
(うん!わかってるわ!次も頑張って!)
声には出せないので、ギュッと腕を抱きしめ笑顔で上目遣い。
すると、頭を優しく撫でられた。
(シャールの手、気持ちいい…。落ち着く)
ドキドキしつつ、またちらりと彼の顔を見る。
(あら…?シャール…?)
笑顔が陰り、どこと無く物思いに耽っているような表情。
勝ったのにあまり嬉しそうではないシャールカーンを不思議に思いながら、サフィーアは小さく首を傾げた。