砂漠の夜の幻想奇談


 そして午後。

各々の礼拝が終わった後、また大広間に集まり二回戦目が始まる。

詩を歌うということで、伴奏をするリュート奏者がシャールカーン達と共に前へ出た。


「恋の詩を吟唱せよ」


そうアフリドニオス王から命じられる。

ミロンの予想が的中し、内心ホッとしたテオドール。

だが気は抜けない。

歌っている最中に詩がすっぽ抜けないか堪らなく不安だ。

しかもこれに負けたら後がない。

深呼吸して心を落ち着かせる。


「まずはテオドールから始めよ」


王様自らのご指名にゴクリと唾を呑んだ。

顔を強張らせて進み出る。


そんなテオドールをサフィーアは王の隣で見守っていた。


(大丈夫かしら…?)


是非ともシャールカーンに勝ってもらいたいが、なぜだか彼も気になってしまう。

未だテオドールとの出会いを思い出せないまま、サフィーアは彼の吟唱を聴いた。

リュートの音が響く。


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