砂漠の夜の幻想奇談
緊張しつつも、なんとか最後まで歌いきったテオドール。
目立ったミスもなく、かなり完璧に近い吟唱となった。
(綺麗な声…)
これがサフィーアの率直な感想だ。
(うん…。上手かったわ。とっても良かった…!)
素直な心の声を伝えるべく、笑顔で拍手を送る。
すると隣にいた王様、周りで聴いていた騎士や召使達、それからシャールカーンまでもが手を叩き出し、大広間は拍手の音に包まれた。
ビックリしたのはもちろんテオドールだ。
まさかの拍手喝采に彼は恐縮して周囲にお辞儀をした。
「うむ。良い声だった」
聴き入っていた王様は閉じていた目を開けテオドールに笑みを向けた。
王様に対し、もう一度頭を下げてから端へ引っ込むテオドール。
「ではシャールカーン殿」
「はい」
自分達の前に進み出るシャールカーンを見て、サフィーアの心拍数が先程の倍に跳ね上がる。
(シャール…!)
リュートが鳴った。