砂漠の夜の幻想奇談
すると、試合終了の角笛が鳴った。
太鼓やラッパのBGMが止み、観衆の叫びも大人しくなる。
それから徐に立ち上がった審判に、皆が注目した。
カムルトスは厳しい眼差しでシャールカーンを見下ろす。
極度の緊張にシャールカーンの心臓はうるさく脈打った。
そして――。
「天晴れ!!シャールカーン殿!!」
掛けられた大声は勝者を称えるものだった。
「窮地に立たされてなお前進し、知恵を絞り勝利を掴み取るとは真に見事!」
観衆がいる手前こんなふうに言っているが、カムルトスが内心伝えたい言葉は「卑劣な妨害にも屈することなく頭(兜)を使ってよく頑張ったな、偉いぞ」というものである。
審判には全てお見通しであった。
厳めしい顔に柔らかい微笑を浮かべてから、カムルトスは宣言した。
「団体戦はシャールカーン殿率いる軍の勝利である!!!!」
瞬間、場内に割れんばかりの歓声が上がった。
勝利を祝うためにドラムが再び叩かれ、楽隊が演奏を始める。
(勝った……シャールが勝ったわ!!)
サフィーアの目からは喜びの涙が溢れた。
「良かった…王子……」
責任を感じていたバルマキーも安堵する。