砂漠の夜の幻想奇談
「ちっくしょう!!!」
バルマキーの背後にいたルカスが怒りを露わに叫んだ。
「っ!?」
バルマキーの喉に刃が食い込む。
(腹いせに私を殺す気か!?)
危険を感じ助けを呼ぼうとするが、仲間のトルカシュは場外で傷の手当て中だ。
周りには、自分達をよく思っていない騎士ばかり――と思いきや。
「ルカス、何やってんのさ」
ミロンの声がした。
「負けたからって八つ当たり?この糞野郎が。放しなよ」
見ればミロンも短剣でもってルカスの頬を撫でている。
「ッ……クソ!!」
ミロンの脅しにルカスは負けた。
バルマキーを突き飛ばして悪態をつきながら立ち去っていく。
「ホント、最低野郎。平気?」
「ええ、感謝致します」
「礼はいらないよ。あいつにムカついただけだから。じゃあね」
そう言って歩き出すも、怪我の痛みによろけるミロン。
それを見たバルマキーは命の恩人に近寄った。
「肩を貸しましょう」
「あ……ありがと」
こうして波瀾の多かった馬上槍試合は幕を閉じた。