砂漠の夜の幻想奇談


(な、なんで知って!?まさか見てたの!?)


何重もの人壁があったのに気づかれていたとは。

大きく目を見開いたサフィーアを見て、ビックリしているなと察したシャールカーン。

意地悪げにクスッと笑う。

「ちらっと見えたんだよ。なんだか抱き合ってたようだったけど?俺の視力、悪くなったのかな?」


(いや~!!笑いながら怒らないでぇ~!!笑顔が怖いのっ!)


シャールカーンの背後にドス黒いオーラを感じたサフィーア。

どうやら彼は嫉妬しているようだ。

勝った自分を差し置いてテオドールのところに行くとはどういう了見だ、と彼の目は語る。


(ごめんなさい…)


後で紙に書いて伝えよう。


(でもでも、さっきの壁はどう頑張っても越えられなかったの)


言い訳を心の中で呟いていた時だった。


「誰?あの子」

「姫様じゃねぇ?」

「姫様!?」

まだ周りで見ていた市民達がざわめき出した。

「おお、サフィーア姫様!」

「どうしてシャールカーン様と姫様が抱き合ってるの?」

「なんだなんだ?もしかして…」


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