砂漠の夜の幻想奇談
この日の晩餐の席にて、シャールカーンはアフリドニオス王から正式にサフィーアの夫となることを認められた。
「約束を違えはしない」
シャールカーンに愛娘を託すと決めた王様の瞳は少々潤んでいた。
「サフィーアをよろしくお願いします」
と言って深々頭を下げたのは母親だった。
「はい。必ず姫を幸せに致します」
蕩けるような微笑で返事をしたシャールカーン。
勝利の祝いということもあり、ちょっぴりワインを飲んでいる。
「式はそちらで挙げるのか?」
「まだ決めてはおりませんが、できればそうしようかと」
戻ったダマスで式を挙げたい。
シャールカーンの考えに王様は唸った。
「うむ……では我々は出られんな」
いくら娘の結婚式とは言え、一国の王が敵対国に赴くのは憚られて然るべき。
「……ならば。カシェルダ!!」
唐突な上、王様直々の呼び出しに、騎士達のテーブルで仲間と一緒に食事をしていた護衛官はむせた。