砂漠の夜の幻想奇談
「な、何用でございましょうか!?」
食事の途中、慌てて大広間の中央へ行き、王様の前に跪く。
「カシェルダよ。我々の代わりとしてサフィーアの婚儀に出席せよ」
「はっ!御意の通りに」
「それから、サフィーアの護衛の件だが」
一瞬、カシェルダの肩がビクリと震えた。
まさか護衛の任を解かれるのでは。
サフィーアは結婚するのだ。
今まで通りと言うわけにはいかないだろう――と思ったが。
「引き続き、お前に一任したい。良いな」
王様から発せられた言葉は、カシェルダの予想を良い意味で裏切るものだった。
「私が…引き続き…?」
「なんだ?不満か?」
「い、いえ!とんでもございません!姫の護衛を務められますこと、光栄の至りにございます。このカシェルダ、謹んで任をお受け致します」
「うむ。頼んだぞ」
満足げに笑った後、王様は真剣な表情でコソッと言った。
「もしサフィーアが祖国に帰りたいと駄々をこねたらすぐにでも連れて参れ。良いな?」
「え?あっ…御意!」
これがアフリドニオス王の本音であった。