砂漠の夜の幻想奇談
第十六話:幸せへの道
それから一週間後、サフィーア達はまた船に乗りダマスへ戻った。
正式に結婚するということで、アフリドニオス王は大事な娘に男女の召使百人と宝石類、それから金貨を授け、これらを持参金とした。
さらに、多くの召使とは別にカシェルダが選んだ護衛官達が五十人。
太守の屋敷は一気に人が多くなった。
「こんなに人がいるのに楽ができないのはどうしてだろうね」
屋敷の執務室にて。
溜まりに溜まった書類の山に埋もれ、シャールカーンは愚痴をこぼした。
「自業自得でしょう。バグダードから帰ってすぐコンスタンチノープルへ行ったりするからです」
しれっと言ってのけた側近のバルマキーだったが、よく思い出してほしい。
「あのさ、王子はお前を助けるために行ったんだぞ!」
トルカシュの言う通り、バルマキーを人質に取られたから、というのも理由の一つだった。
「それに関しましては心から感謝申し上げます。が、仕事をサボる理由にはなりません。早く婚儀をなさりたいならば、とっとと片付けて下さい」