砂漠の夜の幻想奇談


(衣装…?)


何も考えていなかったサフィーアは突然の話題にポカンとした。

まだまだ結婚するという自覚が足りないようだ。

「サフィーア様のお衣装なら、すでに仕立て屋に頼んでありますよ」

横にいたドニヤがすかさず答える。

「そうか、早いね。どんなデザイン?」

「それは存じません。仕立て屋に一任させてますので。ただ、お衣装は王子と対で。お二人がラマダーンの時期の満月よりも美しく輝けるようなものを、とお願いしました」

「フフ、それは楽しみだ」

喋りつつも仕事をするシャールカーンを眺め、サフィーアはホォと溜息をついた。


(花嫁衣装か…)


想像してドキドキする。

自分のドレス姿もそうだが、正装したシャールカーンの姿を考えると、つい口元がにやけてしまう。


(シャール……絶対カッコイイよね。何を着ても似合いそうだもん)


「サフィーア様?どうなさいました?」

「っ!?」

ドニヤに話し掛けられ我に返る。

いかんいかんと頭を振って、サフィーアは編み物に集中した。







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