砂漠の夜の幻想奇談
空に雲一つ見当たらない快晴。
そんな清々しい天の下、結婚式の宴は始められた。
この日を祝うためダマスに集った多くの賓客が太守の屋敷へ招かれる。
市民達も今日は無礼講。
街では食事が振る舞われ、金貨や銀貨が人々に配られる。
施しは誰でも受けられるため、この日のダマスは人で溢れていた。
「ありがたや、シャールカーン様!」
「太守様、おめでとうございます!」
「王子様もとうとう結婚か~。めでたい!」
様々な声が市民達から聞こえる。
そんな街の様子を眺めながら、カンマカーンやノーズハトゥも屋敷に入っていった。
「カンマカーン王子ですね。ようこそおいで下さいました」
待機していた案内人の召使が恭しく一礼する。
「こちらでございます」
屋敷内に一歩足を踏み入れると、芳しい薔薇の香りが漂ってきた。
「あっ、この香りは…」
ノーズハトゥが頬を染めた。
シャールカーンの香りだ。