砂漠の夜の幻想奇談
第十七話:護りたい者のために
シャールカーンとサフィーアが式を挙げてから早数ヶ月。
二人はダマスにて平穏な日々を送っていた。
季節は冬を通り過ぎて春に。
丁度、雨季の時期であった。
(やったわ!やっと一枚できた!)
「やりましたねサフィーア様!とても素晴らしい出来栄えです!」
ぴょんぴょん跳びはねて喜ぶサフィーアと、女主人に拍手を送るドニヤ。
「騒がしいね。どうしたんだ?」
休憩しに執務室からやって来たシャールカーンが二人の笑顔に疑問を抱く。
するとサフィーアがとことこ近寄ってきた。
(ほら、見て!)
彼女がシャールカーンの眼前にズイと差し出したのは羊毛の上着。
「ああ、成る程ね。服が一着できたのか」
(そうなの!早速、兄上達に届けなきゃ!)