砂漠の夜の幻想奇談


 式が終わってもお祭り騒ぎは長く続く。

その期間が過ぎるまでバグダードに滞在すると決めたシャールカーンは、久々に父王と二人きりで歓談していた。


「最近、調子はどうだ?うん?」

「変わりありませんよ、父上」


会話をしながらチェスを指す。

サフィーアは編み物を頑張っているので自室に残してきた。

本当は傍に置いておきたいが、王の前で変に緊張させるのも可哀相だ。

これでいい。


「チェック」

「ぐぬ…ではビショップを」

「父上、そこにビショップを指しても無意味です。このルークで取って、またチェックですよ」

「むむ…相変わらず強いなぁ。シャールカーン」

指導されながら対局を続ける。

シャールカーンの番になった時、オマル王は徐に口を開いた。


「シャールカーンよ。今、我が治世は最盛期にあると思う」



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