砂漠の夜の幻想奇談
「父上…?」
「誇れる世継ぎが二人もいる。しかも、それぞれが正妃を持った。いずれ孫が生まれれば王家はさらに繁栄するだろう」
父王の言いたいことがハッキリわからない。
シャールカーンは無言を貫き駒を動かす。
「残る私の悲願は…西への領土拡大」
シャールカーンの眉がピクリと反応した。
嫌な予感が脳裏を過ぎる。
ゴクリと生唾を呑み込んで言葉を探していると、オマル王が先に切り出した。
「シャールカーンよ。私は近々、西への進軍を考えている。手始めにアナトリアへ向かい、諸王国を従わせ、ゆくゆくはコンスタンチノープルを包囲するつもりだ」
「コンスタンチノープルを、包囲…!?」
「できぬと思うか?確かに私一人の力では無理かもしれん。だからシャールカーン。そちも遠征に同行せよ。私の隣に立ち、私を支えてくれ。共にビザンツの都コンスタンチノープルを落とそうぞ!」