砂漠の夜の幻想奇談
それからすぐ、国を挙げての葬儀が行われた。
臣下によって担がれながら王宮を後にする上等な柩。
人々は皆、行列となり墓所への道を歩いていく。
柩が街を通って王家の墓へ向かう途中、多くの市民達が泣きながらオマル王の死を悼んでいる光景をサフィーアは見た。
歩きながらも、シャールカーンはずっと呆然としている。
アブリザ王妃の柩もオマル王の後に続いた。
「まさかアブリザ様が王を殺すなんてねぇ」
「信じられないよ。あんなにお優しいと評判だったのに」
市民達のヒソヒソ話がサフィーアの耳に届く。
誰が犯人か、噂が広まるのは早かった。
「王子の結婚式を祝ったばかりだというのに…不吉な…」
「誰かに仕組まれたんじゃないか?」
「しっ!滅多なこと言うんじゃないよ」
「でも、こうなると次の王様は誰になるんだい?シャールカーン王子か?」
「カンマカーン王子は?」
人々の声に聞き耳を立てていたサフィーアはゴクリと唾を飲み込んだ。
(次の王様…)
シャールカーンか、カンマカーンか。
喪が明け次第、話し合わなければならない議題であった。