砂漠の夜の幻想奇談

「どうしたんだ…?」

怠そうに聞き返すシャールカーン。

するとバルマキーは早口に報告した。

「たった今、議会にてゾバイダ王妃様が貴方様の王位継承権を剥奪なさいました!!」


(え!?)


「なっ…!」


王位継承権の剥奪。

つまりは、シャールカーンが王になれる権利を無くすということ。


(どうして!?)


突然の決定に訳がわからず、シャールカーンとバルマキーを交互に見上げるサフィーア。


「そう…きたか」

意外にもシャールカーンは冷静だった。

「とりあえず、政務所へ行こう」

緩慢な動作で立ち上がる。


「サフィーアも来るかい?」


(え…。行ってもいいの?)


「いや…。聞いた俺が間違ってた。おいで。俺が一人じゃ嫌なんだ」

心細げに見つめられ、サフィーアはシャールカーンに抱き着いた。

独りじゃないと温もりで伝えるために。







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