砂漠の夜の幻想奇談
あからさまに「ゲッ」という表情を顔に浮かべたシャールカーン。
そう、ここは後宮。
彼女達は父オマル王の側室だった女性達だ。
シャールカーンは前王崩御と同時に側室達を解放したのだが、彼女達の多くは後宮に留まった。
どうやら皆、若い王の寵愛を受けたいと願っているらしい。
今、シャールカーンの妃は正妃サフィーアただ一人。
上手くシャールカーンを陥落させれば自分達が第二、第三の正妃になれるかもしれないのだ。
彼女達にとって、今が勝負どころである。
しかし。
「すまないが皆、出て行ってくれ」
シャールカーンはつれない。
「そのようなこと、おっしゃらないで下さいませ。寂しゅうございます」
「私達もご正妃様と同じくらい王様に癒しを差し上げられますわ」
「王様、是非…!」
だんだん鬱陶しくなってきたシャールカーン。
集まった彼女達を冷めた目で見つめ、こう言った。
「俺と妃の時間を邪魔するなら後宮から追い出すよ」