砂漠の夜の幻想奇談
ビクッと身を震わす側室達。
追い出されては大変と、悔しげな表情をしながら退室していく。
全員が出て行った後、新王は深い溜息を吐き出した。
「どうしたものかな…。毎度あれでは、わずらわしいよ」
(シャール…)
顔に疲労の色が見える夫を、サフィーアはギュッと抱きしめた。
「ああ、心配しないでサフィーア。お前以外、娶るつもりはないからね」
優しい手つきで髪を梳かれ、サフィーアが気持ち良さに軽く目を閉じた時。
「お寛ぎ中、よろしいですか?王様」
側近バルマキーの落ち着いた声がした。
「おい、どうしてバルマキーが入って来れるんだい?ここは後宮だよ?」
「やむを得ず、です。貴方様がすぐに後宮へ下がってしまわれるので、こうしてわざわざ報告をしに参った次第でございます」