砂漠の夜の幻想奇談
冷静に答えてからバルマキーは知らせを告げた。
「カンマカーン王子がご出発なさるそうです。お見送りなさいますか?」
「そうか。うん、行こう」
シャールカーンが王になったため、次のダマス太守は弟のカンマカーンに決まった。
妻のノーズハトゥを連れて、これからダマスへ出発するのだ。
「サフィーアもおいで」
見送りに門まで行こうと立ち上がる。
するとバルマキーはもう一つ、重要な報告をした。
「それから…主立った貴族達が、即位祝いとして王様にご側室候補を献上なさりたいそうですが」
これを聞いた瞬間、シャールカーンの眼差しは鋭くなった。
「いらない、と伝えてくれ」
面倒を増やすな、と彼の目は語る。
バルマキーは王の命令を受け、恭しく一礼した。