砂漠の夜の幻想奇談
ゾバイダ王妃、否、王太后は荒れていた。
「おのれ!!シャールカーン!私のカンをダマスにやるなど!」
ダマス行きはカンマカーン本人も納得した上での決定なので何も問題ないのだが、ゾバイダ王太后は兄が弟を体よくバグダードから追い出したと捉えていた。
「私は諦めぬぞ!いつか必ず、可愛い我が息子カンマカーンを王にしてみせる!」
「ならば、次の手を打ちましょう」
自分しかいない居間に音もなく入ってきた人物。
「ダリラ!」
姿を認めてもらい、侍女ダリラはニカッと笑った。
「次の手とは?」
「王様を亡きものにするために、女を使います」
「女を?」
「シャールカーン王の後宮に女の刺客を送り込むのです」
「ほう…。そこまで具体的に言うからには、用意はできているのだろうな」
「御意」
口角をつり上げて「災厄」は計画の詳細を話し出した。