砂漠の夜の幻想奇談

「お祖父様か…。顔も見たことがないよ」

シャールカーンは遠くを見つめてから観念したような表情を見せた。


「仕方ない。受け入れる態勢は整えておけ」


(え…?迎えるの?側室に…?)


不安げに顔を上げて自分を見つめるサフィーアに気づき、シャールカーンは苦笑した。

「大丈夫。妃になんかしないよ。けれど、無下にできないからね。滞在できるよう準備をさせるだけ」

「では、手配致します」

「ああ、任せるよ」

一礼してから退室したバルマキー。

それと入れ替わりにドニヤが部屋へ入ってきた。

珍しく後ろに一人、侍女を連れている。

「ドニヤ、その侍女は?」

見慣れない侍女を不審に思ったシャールカーンが尋ねると、ドニヤは後ろにいた彼女を前に出させ、紹介した。


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