砂漠の夜の幻想奇談


(なら、私は人間…よね?)


一番知りたいことを紙に書く。

するとダハナシュは力強く頷いた。

「ああ。姫は人間だ。ちょっと身体が特異なだけのこと。あまり深く気にするな」


それから五分経っても十分経ってもサフィーアの身体に異変は起こらなかった。

毎日のようにアズィーザと会って香りを嗅いでいたにも関わらず、一人ケロッとしていた理由はこれだったのだ。

自分の身体にサフィーアが感謝していると、ダハナシュの表情から珍しく笑みが消えた。


「魔の力は強力だが儚くもある」

少々の憂いをこめた声。

サフィーアの頬を撫でる指。


「姫、消えるなよ」


彼の台詞に目を見張るばかりで、サフィーアは何も言葉を返せなかった。









< 645 / 979 >

この作品をシェア

pagetop