砂漠の夜の幻想奇談
(なら、私は人間…よね?)
一番知りたいことを紙に書く。
するとダハナシュは力強く頷いた。
「ああ。姫は人間だ。ちょっと身体が特異なだけのこと。あまり深く気にするな」
それから五分経っても十分経ってもサフィーアの身体に異変は起こらなかった。
毎日のようにアズィーザと会って香りを嗅いでいたにも関わらず、一人ケロッとしていた理由はこれだったのだ。
自分の身体にサフィーアが感謝していると、ダハナシュの表情から珍しく笑みが消えた。
「魔の力は強力だが儚くもある」
少々の憂いをこめた声。
サフィーアの頬を撫でる指。
「姫、消えるなよ」
彼の台詞に目を見張るばかりで、サフィーアは何も言葉を返せなかった。