砂漠の夜の幻想奇談
「ご歓談中、失礼致します。王さ…」
「バルマキー様!」
長椅子からぴょんと立ち上がったファリザード。
テテテと小走りで、不意にやって来た想い人に近づく。
「ファリザード姫…!」
顔を引きつらせ、あからさまに一歩後退したバルマキーは仕事と私情、どちらを優先すべきか本気で考えた。
「逃げたい。だが王様への報告が」という訳である。
「バルマキー様!お仕事ご苦労様です」
「は、はい…」
「私と結こ――」
「お断り致します」
何の脈絡もなく求婚してくるから油断できない。
今日も今日とて姫の言葉をスパッと切り捨て、丁寧に一礼してから王様のもとへ。
(あ、あんなハッキリと…。ファリザード姫、落ち込んでないかしら…?)
心配げに様子をうかがうサフィーアであるが…。