砂漠の夜の幻想奇談
「ハァ……やっぱりカッコイイですわ」
ウットリするファリザードとは対象的に、バルマキーと話していたシャールカーンは深刻な表情を浮かべた。
「ファリザード姫、ルームザーン王子はまだここに滞在しているか?」
王の急な問い掛けに然ほど驚きもせず、ファリザードは素直に頷いた。
「ええ。叔父上ならいらっしゃいますわ」
「良かった。今から会いたいんだが…」
「えっ!それは無理ですわ!せっかくだからバグダード観光をすると言って出掛けてしまいましたもの」
「そう、なのか…」
ちょっと肩を落としてから、額にかかる髪を鬱陶しそうに掻き上げる。
(シャール、なんだか不機嫌…?)
ファリザードに気を取られ、バルマキーの報告を何も耳に入れていなかったサフィーアは、シャールカーンの浮かない表情に首を傾げたのだった。