砂漠の夜の幻想奇談


 主君のもとから離れ、バルマキーは一人トボトボと廊下を歩いていた。

悩み事を抱えるその後ろ姿に覇気はない。

「私は一体、どうしたらいいんだ…?」

以前から、そろそろ妻を持てと父に勧められていたバルマキー。

自分は仕事のことしか考えられないと答えて逃げ回っていたが、今回は逃げが通じそうにない。


先日のこと、父ダンダーンに呼び出された彼は「ファリザード姫とのことを本気で考えろ」と命令された。

「カイサリアと友好的でいるためには、追い返すわけにはいかない…。姫は私と結婚できるなら残ると言っている……何の脅しだ…」

頭が痛い。

彼がこめかみを押さえた時、背中をどつかれた。

「よっ!バルマキー!このラッキー野郎!」

トルカシュだった。


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