砂漠の夜の幻想奇談
「痛っ…!何ですか、トルカシュ。嫌みですか?」
押された背中が痛い。
これだから武官の馬鹿力を相手にしたくないのだ。
バルマキーがトルカシュを睨む。
「え?嫌みっつーか、本当のこと言っただけなんだけど。バルマキー、あのファリザード姫と結婚すんだろ?」
「なっ!?まだ了承してません!勝手なこと言わないで下さい!」
「は!?しねーの!?あんなカワイイ子が好き好き言ってんだぞ!?普通、ラッキーって思って即結婚だろ!お前頭オカシーんじゃねぇ?」
「貴方よりは正常ですよ」
「うわー、これぞ嫌み」
言ってからトルカシュは軽い溜息をついた。
「なあ、何でそんなに嫌がってんだ?姫との結婚」
できる限りの優しい口調で、バルマキーを刺激しないように聞いてみる。
「嫌というか……自信がないのです」
「自信?」
「ファリザード姫を幸せにして差し上げる自信、ですよ…」