砂漠の夜の幻想奇談
バルマキーは自嘲するように言葉を吐き出した。
「愛してもいないのに結婚してこの先、上手くいくとは思えませんからね」
彼にとってはかなり重要なことだったのだが、聞き手のトルカシュにとっては違ったようだ。
「なんだよ、そんなこと?」と言わんばかりの表情をしてからバルマキーに向き直る。
「ならさ、お前が姫と向き合って、ちゃんと好きになればいいじゃねーか」
「え……?」
「結婚は恋のゴールじゃねーの。結婚してから恋愛しろ」
聞いた瞬間、バルマキーは激しい衝撃を受けた。
「………結婚してから、恋愛…?」
「そっ」
「ファリザード姫と?」
「お前の場合はな」
ニシッと笑ってからトルカシュはからかい半分で口を開く。
「どう?少しは結婚したくなった?」
「うるさいですよ。怪力チビ」
「な~ん~だ~と~!」
ムッと頬を膨らませたトルカシュだったが。
「ですが………ありがとうございます」
スッキリした表情で礼を言う同僚を目にし、一瞬驚いた後、やれやれと苦笑したのだった。