砂漠の夜の幻想奇談
シャールカーンも現状を考えて眉間にシワを寄せる。
「確かに……貴方の言う通りだ。列強に挟まれている上、今は帝国に隙がない。立ち向かうのは自殺行為だな」
「わかっていても動きたいんだよ、父上は。老い先長くないからね。独立は我らの悲願だし」
静かに言ってからルームザーンはニヤリと口角を上げた。
「で、ちょっと期待したいんだけど、ピンチになったらカイサリアに援軍をくれないかな?」
「え…?あっ!そのためのっ…!」
「そう。ファリザードを嫁がせて友好を深めようとしたのはこのためだ」
ルームザーンがついて来た本当の目的に気づき、シャールカーンは表情をさらに険しくさせた。
「無理だ。ビザンツとは友好的でいたい理由がある」
「あれ?おかしいな。君達はコンスタンチノープルを落とすのが悲願ではないのかい?」
「歴代の王達はそうだったが……俺は違う」