砂漠の夜の幻想奇談
シャールカーンの強い眼差しがルームザーンを見据える。
「へえ……そうか」
少し圧倒されつつも、カイサリアの王子は余裕そうに腕を組んだ。
「うん、わかった。援軍はいいよ。父上の勝手に君を巻き込むのは可哀相だ」
「………やけにアッサリと引くな。というか、貴方は呑気にここにいて良いのかい?国が戦中なら戻って軍を…」
「私は戦争反対派だ。父上の言いなりになって軍を指揮するつもりはない」
ルームザーンは甥の言葉を遮って強気な口調で発言した。
少々刺が感じられたが、次の台詞を言い出した時はすでに柔らかさが戻っていた。
「だから、私はもうしばらくバグダードに滞在する予定だよ」
ニッコリスマイルで「よろしくね」と甥っ子の肩をポンと叩く。
「え!?本当に戻らないのか!?外交官として来たなら報告しに国へ帰るべきじゃ…」
「そんなつもりはないよ。本当にファリザードが心配で一緒に来ただけだから」
胡散臭い笑みを浮かべるルームザーン。
なぜか上手く言いくるめられたような気がしてならないシャールカーンだった。