砂漠の夜の幻想奇談

「それで、問題の戦況なんだけど……これが実に驚きでね。負けてるんだよ。コンスタンチノープルが」


(ええっ!?)


「まあ、まだ完全に勝負はついてないけど、現在劣勢なのは間違いなくサフィーアの父上なんだよ」


(そんな……。父上…母上…)


一気に暗くなり俯いたサフィーアの髪を優しく撫で、額にキスを一つ。

涙目で上向いた寵姫に安心感を与えるよう、シャールカーンは微笑んだ。

「だからテオドール達が来たんだ。俺に援軍を要請しにね」


(あっ…そっか…。でも……)


カイサリアのハルドビオス王はシャールカーンの祖父。


(私の父上に味方したらお祖父様と敵対することになるわ。シャール…どうするの?)


筆を滑らせていたら質問を書き終える前に後ろからギュッと抱きしめられた。


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