砂漠の夜の幻想奇談

タタタッと軽い足音がしたかと思うと、部屋の出入口を塞ぐようにして数人の宦官が姿を現した。


(えっ!?何!?)


彼らはそれぞれ、手にナイフを握っている。

本物の刺客達であった。


「ん?なんだ貴様らは」

マリアムの幻影に見せられていたルームザーンだったが、正気に戻ったようだ。

腰に下げていた剣を引き抜き、殺意を放っている宦官達へ突き付ける。

サフィーアを背に庇いつつ、彼は冷静に言葉を発した。

「サフィーア王妃が狙いか?それとも、私の首が欲しいのか?」


刺客は誰一人として口を開かなかった。

余計なことはしゃべらない。

彼らは、ただ依頼主の指示通り動く人形なのだ。


ざっと十人はいるだろうか。

突如、一斉に襲い掛かってきた彼らに対し、ルームザーンが一人で立ち向かう。


< 689 / 979 >

この作品をシェア

pagetop