砂漠の夜の幻想奇談
タタタッと軽い足音がしたかと思うと、部屋の出入口を塞ぐようにして数人の宦官が姿を現した。
(えっ!?何!?)
彼らはそれぞれ、手にナイフを握っている。
本物の刺客達であった。
「ん?なんだ貴様らは」
マリアムの幻影に見せられていたルームザーンだったが、正気に戻ったようだ。
腰に下げていた剣を引き抜き、殺意を放っている宦官達へ突き付ける。
サフィーアを背に庇いつつ、彼は冷静に言葉を発した。
「サフィーア王妃が狙いか?それとも、私の首が欲しいのか?」
刺客は誰一人として口を開かなかった。
余計なことはしゃべらない。
彼らは、ただ依頼主の指示通り動く人形なのだ。
ざっと十人はいるだろうか。
突如、一斉に襲い掛かってきた彼らに対し、ルームザーンが一人で立ち向かう。