砂漠の夜の幻想奇談
「はっ!」
刃が舞う。
「ぐっあ…!」
「がっ…!!」
一人の喉を裂き、また一人の首を切り付けた。
急所を狙い確実に仕留めるが、多勢に無勢。
不利だと悟り、三人目を切り捨てたところで剣を鞘におさめ、素早くサフィーアを抱き上げる。
(きゃ!?)
いきなり浮いた身体に驚きルームザーンを見上げると、彼は緊張感のなくなるウインクを送ってくれた。
「逃げるが勝ちってね」
言うが早いか窓から外へ。
サフィーアを抱いたまま全力で中庭を駆け抜ける。
(きゃあ~!王子、足速い!怖いくらい速い!)
サフィーアはビビりまくっていたが、その速さのおかげで刺客達の追跡から逃れられた二人。
ルームザーンは後宮の敷地を出て厩(ウマヤ)まで来ると、準備しておいた愛馬にサフィーアを乗せた。