砂漠の夜の幻想奇談
「どうしたんだ?うっとうしい」
不機嫌なカシェルダに挑んだ怖いもの知らずはルステムだった。
カシェルダは彼の色白の顔を横目に貧乏揺すりを止め、深い溜息を吐く。
「バグダードへ戻りたい」
「……サフィーア王妃の心配か?」
「ああそうだよ。なんで俺まで駆り出されなきゃならないんだ?サフィーア姫の護衛が俺の第一任務だぞ?納得いかない…。納得いかない!」
「二回も言うな。僕だってノーズハトゥザマーン姫をダマスにお一人で残してきたんだぞ。………心配だ…」
どうしようもない護衛官達であった。
「これで姫に何かあったら俺はアフリドニオス王を呪う。本気で」
「物騒な奴だな。けど、気持ちはわからなくもない」
また妙なところでわかり合っていると、バハラマーン将軍の声が掛かった。
「ルステム!軍議を始めるぞ!参加しなさい」
「あ、はい!」
明日からの行動をどうするかの最終確認。
後衛を仕切るルステムは将軍についてシャールカーンの待つ総司令官のテントに入っていった。