砂漠の夜の幻想奇談

「どうしたんだ?うっとうしい」

不機嫌なカシェルダに挑んだ怖いもの知らずはルステムだった。

カシェルダは彼の色白の顔を横目に貧乏揺すりを止め、深い溜息を吐く。

「バグダードへ戻りたい」

「……サフィーア王妃の心配か?」

「ああそうだよ。なんで俺まで駆り出されなきゃならないんだ?サフィーア姫の護衛が俺の第一任務だぞ?納得いかない…。納得いかない!」

「二回も言うな。僕だってノーズハトゥザマーン姫をダマスにお一人で残してきたんだぞ。………心配だ…」

どうしようもない護衛官達であった。


「これで姫に何かあったら俺はアフリドニオス王を呪う。本気で」

「物騒な奴だな。けど、気持ちはわからなくもない」

また妙なところでわかり合っていると、バハラマーン将軍の声が掛かった。

「ルステム!軍議を始めるぞ!参加しなさい」

「あ、はい!」


明日からの行動をどうするかの最終確認。

後衛を仕切るルステムは将軍についてシャールカーンの待つ総司令官のテントに入っていった。









< 695 / 979 >

この作品をシェア

pagetop