砂漠の夜の幻想奇談
本当なら今すぐシャールカーンのもとへ連れて行ってもらいたいが、カシェルダに無茶はさせられない。
サフィーアは小さく頷いた。
不安げな瞳がカシェルダを見上げる。
「ご安心下さい。私は常に姫のお傍におります」
(カシェルダ…ありがとう)
握られた手をキュッと握り返す。
そんなサフィーアの反応に対し、少しだけ口元を緩めたカシェルダ。
しかし、すぐに気を引き締める。
「では、もう行きます。奴らが戻ってくるといけないので」
(あっ!待って!カシェルダ!)
手を離して歩き出そうとした護衛官を呼び止めたくて、サフィーアはカシェルダの服をクイと引っ張った。
「姫?何か?」
(えっとね……その……私……に、妊娠したのだけど…)
今伝えるべきことか迷ったが、信頼できるカシェルダには知っていてもらいたかった。