砂漠の夜の幻想奇談
暖かい日差しが心地好い午後の中庭。
いつも通りラテン語の勉強をサボるため中庭をうろうろしていたサフィーアは、背後の気配に気づいて話し掛けた。
「いやよ、カシェルダ」
つかず離れず見守っていた護衛係りが木の陰から姿を現す。
「姫、お勉強のお時間ですよ。お部屋へお戻り下さい」
「いいの。ラテン語は得意だもの。それよりカシェルダ、アラビア語を教えて」
「あ、アラビア語、ですか…?」
アラビア語と聞いてカシェルダの目が見開かれた。
「ええ。会話なら何とかできるけど…書けないのよね。難しいわ。カシェルダはアラビア語得意でしょう?ラテン語より上手よね」
無邪気に微笑む姫に、カシェルダは内心苦笑しつつも爽やかな笑顔で聞き返す。
「アラビア語を習いたいなど、珍しいですね。どういった心境の変化です?」