砂漠の夜の幻想奇談
王は自分を責めているのだろうか。
わからないが、少なくともルステムにはそう思えた。
「ハァ……カシェルダが羨ましいよ。あいつは単騎でサフィーアを追いかけられる。いつでも傍にいて護ってやれる。今だって、一番近くでサフィーアを護っているだろう」
感情のまま行動できる護衛官。
「カシェルダが、羨ましい…」
再び繰り返したシャールカーンに反応し、ルステムは手の動きを止めた。
「そうでしょうか?」
「えっ?」
「確かに、カシェルダは王妃様の一番近くにいます。ですが…一番遠い存在なんですよ」
自分自身に言い聞かせるかのように、目を閉じる。
「……どういう、意味だい?」
理解に苦しむシャールカーンが尋ねるも、ルステムは曖昧に微笑むだけだった。