砂漠の夜の幻想奇談
問われてサフィーアはドキリとした。
(マリアムのこと…言った方がいいの…?)
失った恋人の代わりに傍にいて欲しいと言われている事実をカシェルダは知らない。
かなり繊細な問題なため、勝手に話してもいいものか…。
悩むサフィーアはちらっとテーブルの上の紙と筆を見たが――。
コツ、コツ、コツ。
突如、廊下に響いた足音。
ピクリとカシェルダが反応し、サフィーアは肩を震わせた。
(ルームザーン王子!?)
どうやら戻ってきたらしい。
(カシェルダ!隠れなきゃ!)
サフィーアは立ち上がると、部屋の中を見回して大きな衣装ダンスを開けた。
「姫!?」
(早く入って!)
無理矢理カシェルダを中に押し込み、衣装ダンスの扉を閉める。