砂漠の夜の幻想奇談
「そうです。最初は命を救って頂いたことに感謝しましたが……聞けば…全てを仕組んだのは…彼だったんです」
言葉を探しながらマリアムは言いにくそうに口を開いた。
「どうやらマルザワーン王子は…その……私のことをずっと、想っていて下さったそうで…」
「……要するに、あれかい?マルザワーン王子も君のことが好きだったと」
「はい……。ルームザーン王子と私を引き裂くため、王様に処刑を提案したのも…彼だったんです。きっと私は、地上では死んだことになっています」
「ひっどい野郎ですね。死んだと見せ掛けて、ここに監禁ですか」
イラッときたのか、ルステムが厳しい口調で言葉を吐き出す。
「侍女の話では、あの日からもう一年経つらしいです。私はずっと、地下にいました…。ここで……マルザワーン王子の寵愛を受けながら…ずっと……」