砂漠の夜の幻想奇談
マリアムの目から涙がこぼれ落ちる。
一年の間、ルームザーンを思い続けながら、何度あの男に抱かれたことか。
苦しくて、辛くて――でも助けなどなくて。
逃げ出そうと試みたこともあったが、迷宮のような地下をさ迷うことしかできず、追ってきたマルザワーンの部下に連れ戻された。
「お、願い…します……」
涙が地面に染みていく。
頭を低く下げ、マリアムは切なる願いを口にした。
「私を…ここから、出して下さい…。お願い、しますっ」
彼らはマルザワーンの部下ではない。
だから、もしかしたらと――。
賭けだった。
俯いたまま、二人の反応を待つ。
不意に、シャールカーンが腰の剣を抜いた。
「ルステム、手伝ってくれ」
「もちろんです」