砂漠の夜の幻想奇談
その頃、シャールカーン一行は侍女の案内で無事にカイサリアの城内へ辿り着いた。
食糧庫の床から地上へ出る。
「で、サフィーアはどこにいるんだい?」
「サ、サフィーアなんて方っ、知りません…!」
未だルステムが剣をちらつかせているため、侍女の声は恐怖で上擦った。
「知らない、か…。なら、ルームザーン王子の部屋に案内してもらおうかな。彼と一緒にいるかもしれない」
行き先が決まったところでルステムが侍女を責っ付く。
「ほら、歩け!」
「ひっ!」
彼女を先頭に、ルステム、シャールカーン、マリアムと続いた。
螺旋上の石階段を上がり、城の二階へ。
日没が迫った薄暗い廊下には、所々に蝋燭の明かりが設置されている。
カツン、カツンと一定の足音を響かせ、先頭を歩く侍女が廊下の角を曲がろうとした時。